シンポジウム「これからのJR日田彦山線沿線地域を考える」を開催しました
2021年02月12日 セミナー
※今回、開催時の動画をYouTubeにアップしています。是非ご覧ください。
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はじめに、主催者挨拶として、藏内 勇夫 会長が「今、コロナ等の問題で、感染症、あるいはワンヘルス等について、新聞をはじめ色々な記事を読んでいるが、ある新聞のオピニオンとして、本日の講師の 木下 敏之 先生がコメントを述べられており、私は日本獣医師会の会長として、まさしくこのとおり、極めて包括的な捉え方をしておられると思い、ぜひ一度、木下先生にご講演をしていただきたいと考えていた。また、福岡県は、今、国際金融センター誘致に努力しているが、この分野にも深い見識をお持ちの方なので、後ほど格調高い話を聞かせていただけるものと期待している。
さて、我々は、法律の改正を待たず、九州が一体となってやれることはやっていこうという取組の中で、地方分権を進めていく団体。これに応えて福岡県議会では、歴代正副議長はじめ、代表者の皆様方のお力添えをいただき、議員提案として、観光振興等の条例をつくり、そしてこのたびワンヘルス条例をつくっていただいた。これは、47都道府県の中でも福岡県議会が画期的な役割を果たしていることの証左ではないかと思う。COVID-19の惨禍の中で、大分県の広瀬勝貞知事が『国がやらずとも、地方でやることは勇気を持ってやっていこう』とおっしゃっていた。そして、服部 誠太郎 副知事が福岡県知事職務代理者になられて、『福岡県の感染症対策において、緊急事態宣言を国がかけるにしても福岡県独自の基準を持って判断をしたい』と明確に国に対して意見を述べられ、それが今実現しているが、これは、我々、九州の自立を考える会のビジョンそのものである。
日田彦山線の問題であるが、よく多くの方々から『解決をしてよかったですね』と言われる。ありがたいことではあるが、解決は一切していない。地元の苦渋の選択の下、我々は一つのコンセンサスをつくることができた。九州の自立を考える会のプロジェクトチーム『日田彦山線復旧問題対策協議会』、座長は本会の理事である 松本 國寛 自民党県議団会長であるが、各会派の代表の皆さん方に検討いただく中でこういった成果を得ることができ、振興策を今からやるぞという体制が取られたところ。つまり、振興というのはまさしく今日からスタートをすると私は思っており、当時議長として頑張ってくれた地元の 栗原 渉 前県議会議長も『会長、今からですよ』といった強い気概でこの問題に取り組む決意をしている」と挨拶しました。
次に、来賓を代表し、福岡県議会の 吉松 源昭 議長から「藏内会長をはじめ、九州の自立を考える会の皆様には、九州の活力ある発展と真の地方分権の実現のため、日頃から積極的に活動を展開されていることに、深く敬意を表する。
JR日田彦山線は、平成29年7月の九州北部豪雨で被災し、添田駅から夜明駅間が不通となったまま、復旧方法について長らく膠着状態が続いていたが、昨年の春以降大きく動き出した。
藏内会長のご尽力により、昨年の3月、九州の自立を考える会に、自民党県議団の松本会長が座長を務めるプロジェクトチーム『日田彦山線復旧問題対策協議会』が設置され、この協議会の皆様、さらに、私の前の県議会議長である地元選出の栗原前議長が、鉄道での復旧を熱望されていた地元自治体や住民の方々の意見と、JR九州の意見を踏まえて、両者にとって、より良い形での復旧方法について調整を進められ、その結果、可能な限り専用道区間を延伸したBRT(Bus Rapid Transit バス高速輸送システム )による復旧が正式に決定された。
災害からの復旧復興は、単に災害前の状態に戻すだけではなく、時代の動向を踏まえて、より良い形での地域振興につなげていくことが重要。県議会としても、九州の自立を考える会、JR九州、さらに地元自治体との連携の下、県執行部と一体となり、長期的にこの地域の振興に取り組んでまいる所存」とのご挨拶を頂戴しました。
また、福岡県知事職務代理者である 服部 誠太郎 福岡県副知事からも「九州の自立を考える会は、これまでも、宗像・沖ノ島と関連遺産群の世界遺産の登録、あるいはワンヘルスの推進、またスポーツの振興、そして12月のセミナーで取り上げていただいたが、洋上風力発電の推進など、県政として取り組むべき重要な課題について多大なるお力添えを賜ってきた。深く感謝を申し上げる。
特に、このJR日田彦山線の復旧問題については、藏内会長をはじめとする九州の自立を考える会の皆様方には、幾度となく手弁当で現地に足を運んでいただき、地元の皆様との意見交換を重ね、復旧案の御提案までいただいた。その結果、昨年7月の復旧会議において、東峰村、添田町それぞれに御事情を抱えながらも、BRTによる復旧を断腸の思いで受け入れるとの判断をいただいたところである。
日田彦山線沿線地域の振興の基本構想もいただいており、我々はこの基本構想を基に振興計画を策定していかなければならないと考えている。県としては、今後、沿線地域の魅力、歴史をいかした観光振興、あるいは地域資源や伝統の力をいかした産業振興、こういったことを通じて、持続的に発展する地域づくりを目指していかなければならないと考えている。とのご挨拶を頂戴しました。
続いて、福岡大学経済学部教授の 木下 敏之 様から「コロナを利用した地域振興」との演台による基調講演をして頂きました。
基調講演の概要は、次のとおりです。
災害多発の時代。さらに2034年~40年には、南海トラフ大地震がかなりの確率でやってくると言われており、宮崎、鹿児島、恐らく大分まで、かなりの被害を受けることが予想されている。また、今回の新型コロナウイルス以上に恐ろしい疫病が入ってくる可能性もある。
そういう時代や節目の変化に対応するためには、県内も再集権が必要で、例えば県庁に集約すべきものは、まず保健所。少なくとも防疫関係は集約すべきで、非常時の場合は、政令市の保健所であっても指導できる権限が県に必要ではないか。また、大災害が発生する時期は、県内の消防組織をできるだけ一本化されていたほうがいい。そして、県警の組織と一体となると大災害の発生のときにも非常に対応がしやすくなると思う。
次に、1997年から2015年までの18年間の財政支出の伸びとGDPの成長を比べると、日本は財政支出が全く増えておらず、GDPも伸びていない。一方、中国はばんばんお金を使っていて、GDPも伸びているという事実がある。政府がお金を使ってデフレから抜け出さない限り、日本全体の経済成長もないし、九州が経済的に自立をすることもないと私は確信している。
自治体が、すぐにできる方法として、ふるさと納税がある。人口9500人で、地方税収が年13億円の佐賀県の上峰町は、ふるさと納税を7年間で280億円稼いで、子どもは18歳まで医療費無料、保育園を増やして待機児童をなくし、子どもに毎月5000円のお稽古券を配布している。
それでは、コロナを利用するお薦めプロジェクト。
まずは、「九州に帰っておいで~」プロジェクト。既に、東京から出ていく人が多かったという報道を聞かれているはず。
「九州に帰っておいで~」というキャンペーンを九州各県で共同して打てばいい。九州各県がばらばらに打つキャンペーンは、量が少なくてほとんど届かない。そして、一番大事なことは、今回は、給料がある程度安くても帰って来るということ。働く場所を思い切って提案すると、もっともっとよい流れになると思う。
次に、コロナウイルスの感染拡大の関係で、免疫力を上げるなどの薬草が世界的に大ブームになっていること。
これから中国はすさまじく高齢者の数が増える。すると漢方薬の原料は必ず不足する。このことを一生懸命やっているのは、富山県。富山県は県を挙げて漢方薬の材料確保に邁進している。
久光製薬の亡くなられた先代の中冨正義会長から「何で鳥栖にこんなに製薬会社があると思う?それは英彦山の山伏から薬草を習った土壌があるからなんだ」と聞いたことから思いついたが、久光製薬は英彦山の山伏のおかげという歴史を掘り起こし、いかすという点でも漢方は結構面白いと思う。
そして、1足す1が2ではなくて、3にも4にもなる「1+1>2の広域プロジェクト」。
今、先進国の潮流は、SDGsということもあって、骨組みは鉄骨、そして壁と床は木材というハイブリッド建築が主流。私は、わかりやすいように木造ハイブリッド建築と言っている。日本人は、ほとんどこの動きを知らない。
5階建てだったら普通の公営住宅は全部木でできる。1年ぐらい前に「これだけの木材が必要だ」と林業界に言ってもらえると準備ができる。日田などの福岡に近い木材の産地も準備が可能で、九州の山間地は非常に助かると思う。
次に、私が勝手につくって私だけが使っている言葉で、長崎新幹線の「柳川・佐賀空港ルート」。筑後船小屋から西鉄柳川駅のちょっと上に新柳川駅を造って佐賀空港に入れて、そこから肥前山口、鹿島につなぐという案。
佐賀県も、ただ単にフル規格になっても何の発展のプラスにもならない。佐賀県が生き残る道は佐賀空港の活性化しかない。この案だと福岡県側にも非常にメリットが大きくて、福岡の第2空港が手に入る。そして、新柳川駅ができると大阪から直接観光客が入ってきて、この辺りは激変する。だから、これを福岡県側から両県に提案されると良いのではないか。
その次に、やったらいいと思うもの。これも私が勝手につくった言葉で、東九州新幹線の「北九州空港・大分ルート」。小倉から宮崎や鹿児島まで行くとちょっと大変で、採算取れないのではないのかと。なので、まずは小倉-大分間だけでも先行して着工されたらいいのではないかと思う。
そして、最後の提案。
今、福岡市が国際金融都市構想を打ち上げているが、本当に実現しようと思うと、実は、鍵は福岡県議会の皆さんと福岡県庁の皆さんである。
大前提があって、金融屋さんは金が要る人がいるところにしか来ない。アジアでの事業展開を任されているアジア統括本部を誘致しないと、金融都市なんて絶対不可能。
ポイントを簡単に言うと、税率を下げないといけない。シンガポールや香港は法人税の税率が15とか17%。日本は自治体の税金を除いても30%で、これだと戦えない。
県庁が所管している税金である法人事業税は今7%ほどかかっていると思うが、これをゼロにする。そして、政府に「福岡はここまでやるから、少しでも税率を下げてくれ」と言って、初めて戦える。
藏内会長の構想ともぴったりはまる。「アジア防疫センター」が福岡にあると、こんなに安全なんだという安心感を与えることになる。なぜかというと、アジアの国々の中で見ると日本のコロナウイルス感染対策は決して優秀ではない。福岡が、今までと全然違って、人も動物も一体となってきちんとした防疫体制に取り組んでくれているというのは、誘致の際の非常に大きな材料になると思う。
基調講演終了後、休憩を挟んで、「JR日田彦山線沿線地域の未来を語ろう」とのテーマで座談会を開催いたしました。
座談会には、本会のプロジェクトチームである「日田彦山線復旧問題対策協議会」の 松本 國寛 座長(本会理事)、福岡県の 江口 勝 副知事、そして、地元自治体から添田町の 寺西 明男 町長と東峰村の 澁谷 博昭 村長にご参加いただき、先の基調講演で講師を務められた 木下 敏之 教授にコーディネーターになっていただきました。
座談会の概要は、次のとおりです。
【松本 國寛 日田彦山線復旧問題対策協議会座長】
昨年6月23日に、藏内会長、添田町の寺西町長、東峰村の澁谷村長、さらに、当時の栗原議長、原中 誠志 副議長にも参加いただいた会議で、そこで合意されたものが、「日田彦山線沿線地域振興基本構想」である。私からは、若干の私見を交え、この基本構想に関する説明をさせていただく。
まず、基本構想にある列車の絵は、宮澤賢治の銀河鉄道をイメージしており、「みんなの夢をのせて…」とあるのは、藏内会長が講演の中で使っておられた言葉を具体的に書き込んだもの。鉄道としての復旧はかなわなかったが、BRTという形で線路がみんなの夢を運ぶ、そういったイメージ。
さて、日田彦山線がこれからも長く存続していくためには運行収支の改善が必要で、具体的には、定住人口を維持し、できれば増やすとともに、関係人口を増やす取組が必要。
一つには、高齢者でも元気に安心して暮らせる環境づくり。
住まいから駅までの足が必要で、グリーンスローモビリティーやオンデマンド交通等の整備とともに、これらが安全に運行できる道路整備が必要となる。
また、新たな人口の流入、移住を促進するために、リモートワークの環境を整えれば、むしろ生活の本拠をこの地域に置き、必要なときだけ都心の会社に出社する、あるいは、都心部のアパートの一室を借りて第2の住居とするといった生活パターンも可能となる。
一方、観光客や買物客などで、この地域のファンやリピーターである関係人口を増やす取組も、より早く大きな効果が期待できる。日田・英彦山という統一ブランドをいかし、その価値を高めるべきで、一つは、共通する地域資源である水を活用すること。二つ目は、地域のシンボルである英彦山の活用、三つ目は、ジビエや川魚など新鮮さが売りの地産地消の食、小石原焼等の伝統工芸を進化させた新たな商品開発などで、このような取組が進めば、稼げるようになり、定住人口の増加にも寄与するという好循環が生まれる。
私からは、5Gが活用できる環境を整備し、この地域の魅力や商品を世界に発信したり、リモートで世界を相手に仕事ができるようにすることを提言したい。そうすれば、福岡市など都心から遠いという利点を克服し、むしろ豊かな生活を楽しみながら仕事ができるという魅力ある地域となり、企業や人を呼び込める。
【澁谷 博昭 東峰村長】
東峰村が考える重点的な振興プラン並びに本村の将来への思いについて説明をさせていただく。
BRT区間である彦山駅から宝珠山駅までの、特に岩屋トンネル、それから筑前岩屋駅から宝珠山駅の間には美しい景観があるので、私どもはそれをいかした観光振興を今後考えていきたいと思っている。
岩屋の湧水は、平成の名水に選ばれており、現在、朝倉普及指導センター並びに内水面研究所の御支援でヤマメとワサビを育てている。
同じく、小石原焼と九州大学に造っていただいた災害伝承館。小石原地区は依然として東峰村で一番の交流人口があり、70万人と言われているが、逆に宝珠山地区はその1割にも満たない交流人口しかない。人の移動を今後考えて、この沿線地区の活性化に力を入れていきたいと思っている。
小石原地区を走っている国道500号線と岩屋地区や竹地区にある県道52号線を直線で結ぶと3.5キロ。何とか52号線のバイパス等を造っていただき、そして小石原の交流人口をこの沿線沿いに取り込んでいけば、さらなる発展があるのではないかと思っている。これは、日田彦山線沿線地区のとても大きな切り札になると私は考えている。
今回のコロナ関係の結果を個人的には非常に喜んでいる。というのは、リモートワークの方がいらっしゃるし、キャンプ場は満杯。ゲストハウスも3月までしっかりと予約が取れている。そういった中で、松本座長が言われたように、必ずしも都会で仕事をしなくてもいい、田舎にいてもテレワークで仕事ができ、そして土日は家庭菜園なり地産地消で生活するという、人間らしい暮らしに戻っていくのかなと考えている。
【寺西 明男 添田町長】
添田町は沿線の三つの核を中心に振興を考えている。
一つは、添田駅を中心とするエリア。添田町史をひもとくと、ここは筑豊炭田の中心の一つで、明治16年に20歳の藏内保房氏と久良知政市氏とで藏内鉱業株式会社を設立し、現在のJR添田駅に隣接する峰地地区で創業発展を遂げた。国のエネルギー政策、地域の発展に大きく寄与され、鉄道もこのことから敷設された。未来に向けて再び活性化、また多くの人を呼び込むために、現在添田駅を中心にパーク・アンド・ライドの場所として整備し、そこから福岡、北九州、また、大分県日田市の方面へ、そして、地元にある英彦山へと広がっていくものと考えている。今回、添田駅からBRTとつなぐ二次交通としてグリーンスローモビリティー、電動カーを運行して、さらに賑わいをつくっていこうと思っている。また、添田駅に隣接する峰地地区は藏内鉱業発祥の地であるが、現在、添田駅まではぐるっと迂回するので、そこをある程度直結して多くの人が利用できるようにし、さらに賑わいをつくりたいと思っている。
二つ目のエリアが、道の駅歓遊舎ひこさんと豊前桝田駅周辺。
道の駅歓遊舎ひこさん周辺では、奥にある森をいかして、家族で楽しめる自然広場というかネーチャーランドとして整備し、住民の皆さんが家族連れで、また健康づくりを楽しめるような場所として集客を図り、日田彦山線BRTバス運行の一つの拠点施設としたいと思っている。
道の駅歓遊舎ひこさんから豊前桝田駅までレールバイクを走らせる構想も考えている。また、豊前桝田駅の駅舎は地域の人が集る場所だったので、それを再び蘇らせるためのコミュニティーセンターと駅舎を併せた新設整備をしてはどうかと考えている。
三つ目は、彦山駅エリア。
何といっても、日本三大修験道の霊峰英彦山を忘れてはならない。彦山駅を駅前広場と一体的に整備することによって、交通のハブ的要素を持たせ、観光バスが、英彦山神宮、豊前坊、そして耶馬溪、中津市、そして澁谷村長のところの小石原焼の窯元への体験ツアーなどをめぐる回遊観光の起点として整備をしたい。
また、近年の歴史の中で、二又トンネルの弾薬庫で大爆発が起こっている。そういう日田彦山線の歴史の一端を伝える記念館というようなものも造ったらどうか。また、今日、木下先生にうかがった山伏が伝えた薬草の件は、非常に興味深かったので、早速持ち帰り、役場の中で議論してみたい。
それから、この地域の将来、未来へのかけ橋、それは日田彦山線沿線の人材育成だろうと考えている。日田市には、廣瀬淡窓先生の咸宜園があり、英彦山にも廣瀬淡窓先生がお見えになった場所があるし、句碑も立っている。リーダー育成塾というようなものもつくってみてはどうか、蘇らせてはどうかなと考えている。
【江口 勝 福岡県副知事】
令和2年7月までの復旧会議でJR日田彦山線の復旧方針が固まるまでに3年ほどを要している。復旧方法をめぐって様々な議論があって、なかなか解決策が見出せなかった。そういう中で、藏内会長を先頭に県議会の先生方、そして九州の自立を考える会の皆様方には、例えば、我々はなかなか行くことはできなかった三陸鉄道等の視察、そしてJR九州や地元の東峰村、添田町とも積極的に意見交換をされ、これを踏まえられて、住民の利便性、それから継続運行という視点から、貴重な提案をいただいた。栗原前議長にも大変な御尽力をいただいた。
これを基に、県としての方針を決めたが、藏内会長が「解決ではない」とおっしゃったように、添田町、それから東峰村の皆様方には苦渋の選択であったと思う。その時点ではまだまだJR九州との調整も残っていたわけであるが、詳しい話をここで申し上げることはできないが、そこでもまた藏内会長に大変な御尽力をいただいた。
併せて、復旧後の地域振興についても、先ほど松本座長からお話があった日田彦山線復旧問題対策協議会を設置していただき、日田市とも意見交換の上、基本構想をまとめていただいた。
今、振り返ってみると、議会と執行部は二元代表制であるということを我々はよく口にするが、もちろん執行部が提案して議会で決めていただくという二元代表制という制度であるが、その心は、県政の施策をよいものに練り上げていくために、知事と議会の共同作業の場だということで、まさに今回の日田彦山線の件についてはそのモデルであろうかなと思う。改めて御礼を申し上げたい。
では、計画を説明させていただく。
先ほど松本座長から説明があった構想を踏まえて、東峰村、添田町とも議論を重ね、それから県の取組もあわせて練り上げてきたもので、「地域の魅力を活かした地域振興・観光振興」、「地域資源を活かした産業振興」、「住みたい地域の魅力づくり」の3本。
まず、「地域の魅力を活かした地域振興・観光振興」。
その一つ目のプロジェクトとして、「共通の資源である水」。これは、添田町、東峰村だけではなくて広域で考えると日田市もそうで、そこにある水を活用した地域振興・観光振興で、特産品の開発の推進とか、英彦山の水辺の環境をいかした子どもたちの学びの場をつくろうというもの。
二つ目のプロジェクトでは、英彦山を核とした新たな観光周遊、回遊の促進。
地域には色々な地域の歴史、自然がある。これをいかして今はやりの着地型の観光とか、キャンプ、グランピングなど個性のあることをやろうというもの。
三つ目のプロジェクトでは、言わずもがなであるが、沿線の美しい村、町をPRする観光プロモーションや景観づくり。人が集まる拠点づくりでは各駅周辺の再整備を積極的にやっていく。それから、宝珠山駅付近での災害伝承館というプロジェクトである。
次に、「地域資源を活かした産業振興」。
これは、小石原焼、高取焼、それから日田の小鹿田焼などの産業振興、それから食に関する地域資源の供給体制整備等。地域資源を活用した新たな商品開発と拠点づくりということで、六次産業化等々による東峰ブランドや添田ブランドの構築と販路拡大などのプロジェクトが挙げられる。
最後に「住みたい地域の魅力づくり」。
色々な定住への支援策等がプロジェクトとして挙げられるが、大事なのは生活道路等の整備と二次交通の整備。これには、先ほど寺西町長の話もあったたように、グリーンスローモビリティーの活用とか、大事な地域内の二次交通のアクセスをどう向上するかとか、BRTだったり幹線道路のバスの利用をどうやって促進するか、そういう検討が挙げられる。
【寺西 明男 添田町長】
「BRTバスが走ることになってよかったね」と住民の皆さん、利用者の皆さんに思っていただかなければと思っている。そして未来につなげる、要するに夢ある未来へということ。観光振興、地域振興と復旧は、一体のものだろうと考えている。そういう意味では、振興計画を我々は住民に十分説明し、取り組んでいかなければならないと思っている。
【澁谷 博昭 東峰村長】
今、私どもがやらなければならないのは、日田彦山線を次の世代の子どもや孫にどう残していくかということが重要だと考えている。そういったところも、今、私たちが責任を持って将来的な姿を描き、そして村民の方と情報を共有する中で、先ほど寺西町長が言われたように「BRTでもよかったね」と言われるような日田彦山線をつくっていきたい。
【松本 國寛 日田彦山線復旧問題対策協議会座長】
県、そして町、村の首長さんたちがおっしゃったこと。まさに同じ路線に乗っていくのだろうということで、乗るならば「みんなの夢をのせて…」というこの列車にみんなで乗っていきたいな、と感じているところ。
そういう中で、例えば移住定住を促進するために誰がどういう形で役割分担をしていくのか。水は、日田市も含めて添田町、東峰村の共同でやっていくことが必要だろうと思っているし、あわせて、藏内会長がいつも「鳥インフルエンザにしても豚熱にしても、県境がとか町境と言うけれども、鳥や野生動物にはそんな境目はないんだよ」という話をされるが、同じ国定公園の中なので、お互いが共同していかしていく必要があると思う。
5Gという話を先ほどさせていただいたが、どうしても博多駅とか天神とか人口が集中するところから始めていくというスタイルになるのは当然のことだが、今度は、日田彦山線の沿線地域からまず取り組んでいく、新しいコロナ禍における、住み方、経済の在り方、そして仕事の在り方ということをテーマに、ここから事業化していくということも重要だと思う。
【木下 敏之 コーディネーター】
私が思うのは、コロナで今まで当たり前だったと思っていたことが、実は当たり前ではないということが、かなりの皆さんに分かってきた。会社に行かなくても仕事が回ることも分かったので、恐らく、これからお二人の町長さん、村長さんが地元に帰ってやろうとすると、「今までこうだったから変えたくない」という話がたくさん出てくると思うが、どうぞこれから新しい当たり前をつくっていただければ、と思う。
10年後、20年後に、東峰村、そして添田町が、この計画を実現してすばらしい自治体になりますように、九州の自立を考える会の皆様の引き続きの御支援をお願いして、この座談会を終わらせていただく。
コーディネーター:木下 敏之 福岡大学経済学部教授
パネリスト:松本 國寛 日田彦山線復旧問題対策協議会 座長
(九州の自立を考える会 プロジェクトチーム)
パネリスト:江口 勝 福岡県副知事
パネリスト:寺西 明男 添田町長
パネリスト:澁谷 博昭 東峰村長
※日田彦山線沿線地域振興基本構想
参考:本会プロジェクトチーム「日田彦山線復旧問題対策協議会」委員
座 長:松本國寛理事
事務局長:中尾正幸会員
委 員:岩元一儀監事、森下博司理事、井上忠敏理事
江藤秀之会員、畑中茂広会員、松下正治会員、神﨑 聡会員
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