2022年(令和4年)を振り返って
2022年12月28日 お知らせ
1 はじめに
当会の2022年最大のニュースは、藏内勇夫会長が公益社団法人日本獣医師会会長として主宰し、大会長を務められた「第21回アジア獣医師会連合(FAVA)大会」が、11月11日~13日の3日間にわたり、ヒルトン福岡シーホークにおいて開催されたこと、そして、大会に先立ち、藏内会長がアジア獣医師会連合(FAVA)の会長に就任されたことでしょう。
当会は、今、新たな成長戦略として、人と動物と環境の「健康」を一体的に守ることを目的とする「ワンヘルス」の推進を提言し、福岡県議会並びに福岡県と連携して、その実践の促進に取り組んでいます。
ワンヘルスの中心的課題は、3年にわたり世界中で猛威を振るい続ける新型コロナウイルス感染症のような人獣共通感染症の克服ですが、人獣共通感染症のパンデミックは、世界経済を混乱に陥れ、より良い社会と生活の実現に向けた人々のあらゆる努力を瞬く間に水泡に帰してしまうことを、私たちは目の当たりにしてきました。そこで、インフラの整備を九州の成長戦略の柱の一つとする当会としても、社会を支える最も重要なインフラといえるワンヘルスの推進に取り組むこととしたのです。
また、それだけではなく、ワンヘルスは、関連するバイオ・医薬産業、健康・スポーツ産業、農林水産業や商工業など既存の様々な産業をワンヘルスのコンセプトやアプローチで見直し、再編することによって新たな価値を生み出す可能性に溢れています。まさに、ワンヘルスは、それ自体が、未来を切り拓く成長戦略の柱として期待されているのです。
さて、ワンヘルスの推進をライフワークとされている藏内会長の下、27年ぶりに日本で、また、九州では初の開催となった今FAVA大会では、「アジアからのワンヘルスアプローチ」をテーマに、ワンヘルスに関する国内外の最先端の取組についてのシンポジウムや各国の獣医師による最新の研究・活動の報告や講演なども行われ、国内外から大変多くの獣医師、医師等の方々が参加されました。
また、同会場内外において、誰もが参加できる関連イベントとして、福岡県“One Health”国際フォーラムや福岡県農林水産まつりも同時開催され、こちらも大盛況となりました。
そして、最終日には、今大会の成果を踏まえ、今後のアジアにおけるワンヘルス活動の指針となる「アジアワンヘルス福岡宣言2022」が採択され、大成功となった今FAVA大会と関連イベントの全てが無事終了しました。
本項の最後に、今大会のレガシーとして、アジア獣医師会連合(FAVA)(本部事務所はタイ・バンコク)のワンヘルスに関する機能を担う日本事務所として、「FAVAワンヘルス福岡オフィス」をアクロス福岡(福岡市)内に開設することがFAVA執行部会で正式に決定されたことをご報告します。
先の当会総会で設立のご承認をいただきました一般財団法人ワンヘルス推進支援機構が、この「FAVAワンヘルス福岡オフィス」の管理運営を担うことになります。
2 2022年の主な出来事
【2月】
8日、福岡県におけるワンヘルス推進の拠点として整備される「ワンヘルスセンター」において、 中核的機能を担う施設「保健環境研究所」の新たな建設地が、みやま市にある「保健医療経営大学」の敷地に決定されました。
16日、当会の藏内会長が、総理官邸を訪れ、岸田文雄内閣総理大臣にワンヘルスの実践について要請を行いました。この要請書には、「アジア新興・人獣共通感染症センター(仮称)」の九州への設置と「ワンヘルスセンター」の設置への支援協力等が盛り込まれていました。会談で岸田総理は、福岡県のワンヘルスに対する取組を高く評価くださるとともに、中長期的な感染症対策にも深く理解を示されました。
一方、大変、残念な出来事も起こりました。24日早朝(現地時間)、ロシア軍が、国際社会の度重なる警告を無視し、ウクライナへの全面的な侵攻を開始したことです。
この暴挙に対し、福岡県議会では、3月1日「ロシア軍のウクライナ侵攻に強く抗議し、恒久平和を求める決議」を議決しました。同月11日、この決議に対するお礼と、ウクライナの現状について説明するため、福岡県に在住するウクライナの方8名が福岡県議会を表敬訪問され、秋田章二議長(当時)をはじめ、当会の藏内会長、各会派代表者等がお迎えしました。その際、藏内会長は、訪問された方々に「今回のロシア軍の暴挙は、許すことができません。できる限りの支援活動を行っていきたいと思います」と語りかけました。
どのような成長戦略も人々の命と健康を守れる社会でなければ意味を持ちません。一刻も早くこの戦争が終結し、ウクライナの人々が平和な生活を取り戻されることを願っています。
【4月】
当会の林裕二理事が、朝倉市長選に再選され、2期目の市政がスタートしました。
林理事は、朝倉市長として1期目の就任当初より九州北部豪雨による災害からの復旧・復興を最重要課題として取り組まれています。
当会としましても、林市長とともに、九州北部豪雨による被災地の復旧・復興について、今後も積極的に支援してまいります。
【6月】
当会の理事で㈱JR九州相談役の唐池恒二氏が会長を務められている「一般社団法人九州観光推進機構」が「九州観光機構」へと組織名を変更されました。
九州観光の振興に、より当事者意識を持って取り組んでいくとの決意を込めた改称で、10月に開催した当会の総会で講演された唐池理事は、同機構の会長として、「九州観光の再生は、コロナからの復興と観光王国の再興である。当事者として正面から観光事業に取り組みたい」と抱負を述べられました。
当会が提言する九州の成長戦略の柱の一つである「観光振興」において九州各県をリードする司令塔組織である新「九州観光機構」の更なる発展に期待したいと思います。
また、当会が策定し、提言した「日田彦山線沿線地域振興基本構想」に基づく新たな施策の展開があり、東峰村に先端的なデジタル拠点「テレワークテラス宝珠」が整備されました。24日に開所式が行われたこの施設は、高速Wi-Fi、ウェブ会議システム、テレワーク用スペース等を備えたデジタル拠点として、テレワーク等多様な働き方を支援するとともに、住民のデジタル活用を推進し、東峰村への移住定住を促進することを目的としており、基本構想の提言に沿った取組です。
【7月】
11日に、駐日ウクライナ特命全権大使のセルギー・コシンスキー大使が福岡県議会を訪問され、桐明和久議長、当会の藏内会長とともに、ウクライナ留学生の受け入れなどについて活発に意見交換が行われました。
ワンヘルスに関する新たな動きもありました。
国連ハビタット福岡本部が設立25周年を迎えたことから、26日、マイムナー・モハメド・シャリフ国連ハビタット事務局長が県議会を訪問され、桐明和久議長、当会の藏内会長、福岡県国際交流議員連盟の樋口明会長ほか役員がお迎えしました。
この懇談の席で、シャリフ国連ハビタット事務局長と当会の藏内会長は、ハビタットとワンヘルスは、ともに環境と人々の健康を守ることを目的とする点で共通しており、今後、ハビタット福岡本部と当会等による連携事業を検討していくことで意見が一致しました。
この月にも、「日田彦山線沿線地域振興基本構想」の進展がありました。
28日、基本構想の骨格をなす日田彦山線BRTに「BRTひこぼしライン」という愛称が付けられ、導入車両やそのデザインが決定・公表されました。
導入車両は、環境配慮の小型電気バス4台と中型ディーゼルバス2台の計6台で、それぞれ地域の魅力を表し、色とりどりにきらめく6色を用い、おりひめの羽衣をイメージしたデザインをまとって美しい景観の中を駆け抜ける予定です。
開業予定は、2023年の夏。駅は、被災前の鉄道駅12駅に加え、学校や病院など生活に密着したエリアに24のBRT駅が新設され、計36駅となる計画です。また、その内7駅(添田、彦山、筑前岩屋、大行司、宝珠山、大鶴、今山)には、駅ごとに木材を活用して、地域の特色を表現した待合ブースが設置されることになっています。
【9月】
当会では、政策提言において九州へのインバウンド客の周遊性を高める新幹線網の早期構築を提言していますが、23日、佐賀県の武雄温泉駅と長崎駅を結ぶ西九州新幹線が開通しました。
その後、JR九州は、最初の1か月が約19万8千人、2か月目には全国旅行支援や外国人観光客の増加もあって利用者数が伸び、開業から2か月間で約42万2千人に達したと発表しています。
【10月】
福岡県では、ワンヘルスに関する条例として全国初の「福岡県ワンヘルス推進基本条例」が令和2年12月に議員提案で制定され、昨年1月施行されましたが、この基本条例の趣旨を更に進め、環境と人と動物のより良い関係づくりに関して行政、県民、事業者が担うべき責務や取組を促進する仕組み等について規定した「環境と人と動物のより良い関係づくり等福岡県におけるワンヘルスの実践促進に関する条例」(略称「ワンヘルス実践促進条例」)が議員提案で制定されました。
この条例によって、ワンヘルスの実践が促進されることはもちろんですが、それだけではなく、同条例には農林水産物等のワンヘルス認証や生産過程等の適切な管理といった、当会が提言する九州の農林水産物のブランド力の向上に資する内容も多く含まれており、当会の他の成長戦略との相乗効果が期待されます。
【11月】
12日、馬や犬とのふれあい(アニマルセラピー)による健康づくりやワンヘルスに関する体験型学習を楽しむことができ、ワンヘルス実践促進条例に規定するモデル施設のひとつに位置づけられる「ワンヘルスパーク」が、福岡県と福岡市の協力の下、舞鶴公園(福岡市)内にオープンしました。
当会は、政策提言において高速交通ネットワークの整備を提言していることから、佐賀県、福岡県、熊本県の各議会の有志議員を会員とする「有明海沿岸インフラ整備3県議会連絡会議」の活動を支援し、有明海沿岸道路の早期整備の実現に取り組んでいます。
12日、この有明海沿岸道路の大野島IC(福岡県側)から諸富IC(佐賀県側)の1.7kmが開通しました。この開通によって、同区間にある全長854mの「有明早津江川大橋」で佐賀・福岡両県が結ばれることになりました。
この有明海沿岸道路は、物流や地域間交流の促進、佐賀空港へのアクセス向上、災害時の物資輸送の緊急輸送道路としての役割が期待されていることから、当会は、今後も継続的に「有明海沿岸インフラ整備3県議会連絡会議」の活動を支援してまいります。
【12月】
12月4日、「福岡国際マラソン選手権大会 2022」が新たな運営体制で開催されました。
九州において長年開催され、親しまれてきた福岡国際マラソン選手権大会は、諸般の事情により2021年の第75回大会をもって終了することが決まっていました。
しかし、大会の終了を惜しむ多くの声に動かされた県が新たなスポンサー集めや助成金などで支援・参画し、運営体制を一新して開催されることになったものです。
当会は、政策提言の柱の一つにスポーツ・スポーツ産業の振興を掲げ、その手段として世界的スポーツ大会の誘致・開催を提言し、これまで、数々の国際大会の開催やキャンプ地の誘致を支援してきました。この福岡国際マラソン選手権大会の存続は、誠に喜ばしく、福岡県のご尽力に感謝をいたします。
本大会の開催当日は、国内外のトップランナーが名勝負を繰り広げ、沿道では多くの方々が選手を応援されていました。当会としても、九州の冬の風物詩として地元に定着した本大会が、改めて世界でも注目される大会となるよう、支援と提言を行ってまいります。
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