新年のごあいさつ(平成29年1月)
2017年01月01日 お知らせ
新年明けましておめでとうございます。
昨年の我が国の経済は、緩やかな回復傾向にありました。特に、有効求人倍率が最高水準で推移するなど、雇用面での改善が進んでいます。しかしながら、給与水準やGDPは伸び悩み、企業の業績も為替によって左右されるなど不安定で、多くの国民が景気回復を実感できていないのが現状です。
昨年を振り返りますと、様々な出来事がありました。
まずは、「熊本地震」であります。この地震によりお亡くなりになられた方に改めて哀悼の意を表しますとともに、被害に遭われた皆様へ心よりお見舞いを申し上げます。
地震発生後、私はすぐに、当時の井上忠敏福岡県議会議長を通じて九州各県議会議長会に、九州各県並びに九州各県議会が一体となって、適切な役割分担の下、迅速かつ効果的に被災者・被災地の救助及び生活支援、さらに今後の復旧・復興に向けた支援に取り組むよう要請いたしました。
また、九州全域で観光客のキャンセルが相次いでいた事態を受け、再び九州各県議会議長会に対し、国等に九州の観光産業の救済を求める緊急提言を行っていただくよう提案したところです。このように九州各県が一丸となって要請活動を行った結果、国からは「九州ふっこう割」の創設をはじめとする熊本地震対策補正予算を編成していただきました。現在では、九州への観光客はほぼ前年並みに回復しているとのことであります。
九州観光への追い風もありました。
1月には「神宿る島、宗像・沖ノ島と関連遺産群」の正式推薦書がユネスコ世界遺産センターに提出され、7月には文化審議会において「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」の推薦が決定されました。続いて12月にはユネスコ無形文化遺産に「山・鉾・屋台行事」が登録されましたが、九州からは佐賀県の「唐津くんちの曳山行事」、熊本県から「八代妙見祭の神幸行事」、大分県から「日田祇園の曳山行事」、そして福岡県から「博多祇園山笠行事」、「戸畑祇園大山笠行事」の5件が登録されています。
今後は、既に登録されている「明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域」や暫定リストに記載されている自然遺産候補「奄美・沖縄」などとともに、世界に誇れる観光資源として適切な保守管理・保存を行い、あるいは地域の大切な伝統行事としてしっかり継承し、その魅力を高め、発信していくとともに、最大限に活用する取組みが求められます。
また、本会の理事であります唐池恒二氏が会長を務めておられるJR九州が、6月にクルーズトレイン「ななつ星in九州」で日本サービス大賞内閣総理大臣賞を受賞され、10月には念願の上場を果たされました。いずれも誠に喜ばしい出来事であり、JR九州には、今後とも地域の足を守りつつ、九州の成長を支える観光事業にさらに積極的に取り組まれ、ますます発展されますことを祈念いたします。
さて、当会が平成26年10月に「九州の成長戦略に係る政策提言」を発表して約2年が経過しました。この間、いくつもの提言事項が実現し、また実現に向けた取り組みが進められています。
例えば、観光戦略では、従来の都道府県単位の観光振興条例の枠を超えて、世界に向けて「観光王国九州」というブランドを発信し、九州の一体的な観光振興を目指す、画期的な「観光王国九州とともに輝く福岡県観光振興条例」が制定されました。フリーWi-Fiポイントも次々に拡大し、ブランド価値を高めるツールとなる九州の統一的なロゴマークについても鋭意検討が進められています。
次に、国際拠点港湾の特徴を生かした競争力強化、機能の充実については、博多港のクルーズ船受け入れ環境整備に対し国の予算措置がなされ、農林水産業の強化では、九州の農林水産物とその加工品の輸出戦略において司令塔となる「九州農産物通商(株)」が設立されました。
また、鳥インフルエンザ、口蹄疫など、人獣共通感染症対策等に取り組むため、九州各県とアジア各国が広域的に連携する体制を整備するよう提言していましたが、私が会長を勤める公益社団法人日本獣医師会と公益社団法人日本医師会が協力し、11月に、世界約40か国の獣医師や医師が集まり、人と動物の共通感染症、薬剤耐性菌、動物介在療法(アニマルセラピー)等さまざまな課題について協議する「世界獣医師会(WVA)- 世界医師会(WMA)による「One Health」に関する国際会議」を北九州市で開催しました。このような国際会議を九州で開催することは、会議テーマへの社会的な関心を喚起し、提言しておりました連携体制整備を促進することはもちろん、世界に向けて九州のブランド価値を高め、インバウンドの増加に寄与する観光戦略としても効果的であることは言を待ちません。
ラグビーワールドカップ2019、2020東京オリンピック・パラリンピックもいよいよ近づいてまいりました。ロンドンラグビーワールドカップ、リオオリンピック・パラリンピックでの日本勢、九州出身選手等の活躍の記憶と感動も新しい今こそ、「九州の成長戦略に係る政策提言」のとおり、世界を目指すトップアスリートを九州から輩出し、九州のスポーツとスポーツ産業を振興するため、その司令塔となる「九州スポーツ振興財団(仮称)」の設立に向けた検討を進め、九州各県が一体となってジュニアアスリートを支援する体制の構築に取り組んでいかなければなりません。
このように、今年も当会にとりまして何かと課題の多い年となりますが、政策提言の実現と九州の成長発展には、言うまでもなく九州各県のご理解とご協力が不可欠です。当会におきましても、引き続き、会員をはじめとした九州の政財界、そして、行政機関の皆様方との連携の下、九州の成長に何が必要なのか、ともに学び、議論して新たな提言を目指しますとともに、九州が元気になり、九州が日本を支えていくのだ、という強い思いを持って政策提言の実現に向け邁進したいと思っておりますので、今後とも何とぞよろしくお願い申し上げます。
結びにあたり、本年が皆様にとりまして、幸多く、素晴らしい年となりますことを衷心より祈念いたしまして、新年のご挨拶とさせていただきます。
平成29年1月
九州の自立を考える会 会長 藏内 勇夫
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