令和2年九州の自立を考える会10大ニュースについて
2020年12月24日 お知らせ
まず、新型コロナウイルス等の人獣共通感染症対策を含む「ワンヘルスの推進」に関するニュースを三つ紹介します。
〇 日本はもちろん、世界でも初めてワンヘルスの理念と実践を法制度化した福岡県ワンへルス推進基本条例が成立
現在、世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をはじめとする人獣共通感染症は、過度な森林開発など人間の活動により生態系の劣化が進み、人と野生動物の生活領域が近づきすぎたことで、動物の感染症が抵抗力を持たない人に感染するようになったものです。この人獣共通感染症対策等に取り組むために世界獣医師会が提唱した「人と動物の健康と環境の健康(保全)を一体のものとして守らなければならない」という「ワンヘルス」の理念は、世界医師会との連携の下に、今や世界の共通認識となっています。そして、福岡県で開催されたワンヘルスに関する国際会議で採択された「福岡宣言」に基づいて、「ワンヘルス」を理念から実践に移行させるための取組が進められてきました。
今回、福岡県議会が議員提案で制定した「福岡県ワンヘルス推進基本条例」は、このワンヘルスの実践に向けて、基本となる事項(基本理念、基本方針及び基盤となる体制整備等)を定めたものです。
現在の世界の状況を見れば明らかなように、感染症のパンデミックは、まさに大規模かつ広域の大災害と同様、あるいはそれ以上に、社会の成長発展に対する最大の危機となります。成長戦略には防災・防疫対策の基盤が不可欠といえます。この認識に立って、当会の「九州の成長戦略に関する政策提言」(平成26年10月)においても既に、インフラ(基盤)整備の一環として、「アジア各国が共通して取り組むべき人獣共通感染症対策等の拠点として、アジア防疫センター等の機関を九州に設置」することを提言していました。この提言事項は、今回の条例にも盛り込まれています。
今後、当会は、この条例に基づき、人獣共通感染症対策をはじめとする「ワンヘルス」の理念の普及と実践に向けた具体的な取組について、更に提言してまいります。
〇 「新型コロナウイルス感染症対策」等を緊急提言
ワンヘルス推進基本条例により、長期的な観点から、また、一種の社会改革として人獣共通感染症対策に取り組む一方で、目前の危機である新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の更なる拡散を防ぐとともに、ひっ迫する医療体制を維持・救済する取組や打撃を受けた事業者と住民の生活を支援し、経済を立て直す取組も急務となります。
そこで、当会は、感染拡大の第一波が襲った4月、九州において最も被害が大きかった福岡県の小川知事に対し、公益社団法人日本獣医師会との連名で、スピード感を持って県民に対する幅広い支援を行うことや各市町村と連携し、全国に範となる独自の政策~福岡モデル~を確立し、実践すること等をはじめとする緊急提言を行いました。
〇 藏内 勇夫会長がNHKのニュース番組に出演。ワンヘルス推進の必要性を発信。
藏内 勇夫会長がテレビのニュース番組(NHK令和2年6月5日「ロクいち!福岡」)に出演。インタビューに答え、ワンヘルスの理念と人獣共通感染症についてわかりやすく解説されました。また、藏内会長は、福岡県議会でワンヘルス推進基本条例の検討が本格的にスタートした際にも多くの県議会議員や県執行部の職員を前にワンヘルスの歩み等について講演(7月22日)するなど、ワンヘルスの伝道師として、広報活動に精力的に取り組まれた1年でした。
次に、当会が提言してきた「九州の成長戦略」の実現に向けたニュースを順を追って紹介します。
〇 福岡県立美術館の建設地決定
当会は、世界に向けた「福岡」の顔となり、その認知度を高めるとともに、インバウンドの拠点となる「国際レベルのセントラルパーク」をつくり、新たな県立美術館をその核とすることを提言してきましたが、新・福岡県立美術館建設地選定委員会の報告書を踏まえ、「大濠公園南側(現在、福岡武道館及び日本庭園がある区域)」を建設地とすることが決定されました(1月)。
交通至便で人が集まりやすいことや他の文化施設等との連携による相乗効果で内外の人々に福岡の魅力が発信できること等が決め手となりました。
県民の芸術文化の拠点、まちづくり、地域活性化の拠点、そして観光の拠点となることが期待されます。
〇 日田彦山線沿線地域振興基本構想を公表。振興基金も創設される。
当会では、九州の成長発展において地域の公共交通の維持とこれを基盤とする地域振興が不可欠であるとの観点から、平成29年7月の九州北部豪雨により被災し、添田駅・夜明駅間が不通となっているJR日田彦山線の早期復旧と日田英彦山地域の広域的な地域振興の取組を支援してきました。
このため、当会に、プロジェクトチーム「日田彦山線復旧問題対策協議会」を設置(3月)。復旧方法や地域振興策について協議・検討を重ねてきました。
その結果、復旧方法については、可能な限り専用道区間を確保したBRT方式とすることが、関係自治体(東峰村、添田町、日田市、福岡・大分両県)とJR九州で合意され、地域振興策については、福岡県に本地域の振興基金(10億円)が設置されることになりました。
さらに、この基金を活用し、この地域をコロナ後の新しい社会システムや生活様式を踏まえた広域的観光振興のモデル地区とするため、当会は、東峰村や添田町のご意見も踏まえた「日田彦山線沿線地域振興基本構想」を策定・公表しました。
今後は、関係自治体やJR九州と連携し、この構想の具体化に向けた取組を進めてまいります。
〇 4年連続の大規模災害となる「令和2年7月豪雨」発生
「令和2年7月豪雨」は、九州をはじめ日本列島に大きな傷痕を残しました。今回の一連の豪雨による浸水以上の住宅被害は、全国34府県で計1万7800棟余に上り、うち熊本県が約8800棟、福岡県は約5000棟を数え、九州で亡くなられた方は70人を超えるという大災害でした。亡くなられた方、被害を受けられた方に改めてお悔やみを申し上げます。
九州では、これで平成29年以来4年連続の災害発生となり、本会が提言しております「大規模災害に備えた基幹的広域防災拠点の整備」の必要性が再認識されました。当会は、この提言の実現に向けて、更に取り組んでまいります。
〇 北九州下関道路建設計画が大幅に前進
北九州下関道路は、既存道路ネットワークの課題解消、関門トンネルや関門橋の代替機能の確保、そして循環型ネットワーク形成による北九州・下関地域の一体的発展のために必要な道路であるとともに、本州と九州を結ぶ大動脈を補完するだけではなく、アジアへのゲートウェーとしての機能も期待されています。そこで、当会は、九州の成長戦略上不可欠の基盤として、その建設に向けた取り組みを支援してきました。
国と2県2市で構成する「下関北九州道路計画検討会」で示された橋梁案が妥当との方針の下に、7月には計画段階評価に着手。更に、12月には、下関市の旧彦島有料道路と北九州都市高速道路の日明出入口付近をつなぐルートが固まり、北九州下関道路建設計画は大幅に前進しました。
〇 当会の藏内 勇夫会長が、アジア獣医師会副会長に就任
オーストラリア、ニュージーランドを含むアジア・オセアニアの20か国・地域で構成されたアジア獣医師会連合(FAVA)の各国代表者会議が10月16日、ウェブ形式で開催され、公益社団法人日本獣医師会会長でもある本会の藏内勇夫会長が副会長に就任されました。副会長は、次期会長と位置付けられたポストのため、2年後には、FAVA会長に就任されることになります。
なお、2022年11月には、FAVAが主宰する「第22回アジア獣医師会連合大会」が福岡市で開催されることも決まっており、藏内会長は、FAVAの副会長そして会長として、ワンヘルス推進基本条例の趣旨を福岡から発信し、アジア各国と連携したワンヘルスの推進に取り組むとの決意を表明されています。
〇 福岡県議会で「洋上風力発電促進に関する決議」を議決。議員連盟も誕生
福岡県議会の9月定例会最終日(10月14日)に「福岡県における洋上風力発電促進に関する決議」が議決され、この決議に沿って、福岡県が一体となった取組を進めていくため、同日、「洋上風力発電促進福岡県議会議員連盟」も設立されました。
当会は、「九州の成長戦略に関する政策提言」において、九州の経済発展の基盤となる安定的なエネルギー供給のため、「多様なエネルギー供給」や「地域主導による効率的で環境面でも優れた発電方式の実現」を提言していますが、洋上風力発電は、この提言の趣旨にも合致する優れた発電方式です。
このため、当会は、上記議員連盟と連携して、洋上風力発電の促進に向けた取組を更に進めてまいります。
〇 福岡県スポーツ推進基金の創設及び管理財団の設立
当会は、「スポーツの振興及びスポーツ関連産業の振興等」を九州の成長戦略の柱の一つとし、「九州スポーツ振興財団(仮称)」の設立等を提言していましたが、福岡県議会の2月定例会において「福岡県スポーツ推進条例」が可決・成立。さらに同条例に基づき総額50億円規模の「福岡県スポーツ推進基金」が創設され、11月には同基金を管理運用する「一般財団法人福岡県スポーツ推進基金」が設立されました。またひとつ、当会の提言が実現したことになります。
今後は、この一般財団法人福岡県スポーツ推進基金と連携・協力して、福岡・九州のスポーツ振興等に取り組んでまいります。
以上
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